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2026-09 更新

シンガポール国籍の取得と日本国籍

シンガポール市民権を取得すると日本国籍を失います。両国の条文で仕組みと手続きを確認します。

本記事の情報は参考目的です。制度は変更される場合があります。最新情報はMOM(人力省)・ICA(入国管理局)の公式サイトでご確認ください。

シンガポール国籍を取得すると、日本国籍を失います。日本の国籍法11条1項が「日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」と定めているためです。手続きを踏んで失うのではなく、取得した時点で法律上当然に失います。

永住権とはまったく性質の違う決断です。永住権は日本国籍を保ったまま取得できますが、国籍はそうではありません。この記事は、両国の一次情報でその中身を確認したものです。

申請できる条件

ICAが公表している入口の条件は、21歳以上でシンガポール永住権を2年以上保有していることです。配偶者ルートは、永住権を2年以上保有し、かつシンガポール市民と2年以上婚姻していることが条件で、市民である配偶者がスポンサーとなって申請します。

ただし憲法123条(1)が定める本則はもっと重く、申請直前12年のうち通算10年以上の居住を求めています。免除規定があり、直前6年のうち通算5年以上の居住がある場合、または政府が適当と認める特別な場合にこれを緩められます。永住権2年での申請はこの免除規定の運用にあたります。

免除がかかるのは10年の要件だけです。申請直前12か月の継続居住という別の要件には免除規定がなく、条文上は永住権2年での申請でも求められます。条文はこのほかに、善良な性行、シンガポールに永住する意思、マレー語・英語・中国語・タミル語のいずれか1つの初歩的な知識も要件として挙げています。言語の要件は45歳以上の人や聴覚・言語に障害のある人について政府が免除できます。

費用と審査期間

段階項目金額
申請時申請料(1件あたり)S$100
承認後シンガポール市民権証書S$70
承認後Identity Card(15歳以上)S$10

ICAは申請を12か月以内に処理すると公表しています。承認の基準となる年収、納税額、雇用の継続年数は一切公表されていません。公表されているのは、シンガポール人との家族関係、経済的貢献、学歴資格、年齢、家族構成、居住年数といった考慮要素の例示だけです。

市民権試験も英語試験もない

MHAは国会答弁で、申請者のシンガポールに関する知識や英語力について定められた試験は存在しないと明言しています。16歳から60歳の申請者に義務づけられるのはSingapore Citizenship Journeyの修了で、これはeラーニング、施設訪問、コミュニティセッションからなり、合否のあるテストではありません。

シンガポール側の二重国籍の扱い

シンガポールは二重国籍を認めていません。憲法126条(1)により、申請者は「Oath of Renunciation, Allegiance and Loyalty」を宣誓するまで市民として登録されません。宣誓の文言は、外国の国籍に由来する権利や特権を行使しないこと、いかなる外国への忠誠も完全かつ全面的に放棄すること、シンガポール共和国に忠誠を尽くすことを誓う内容です。

あわせてICAの誓約書に署名します。誓約書は二重国籍が認められないことを明記し、外国籍をすべて放棄した証拠書類を指定の期限内に提出しない場合、憲法134条と135条により市民権剥奪の対象になりうるとしています。

憲法134条(1)(a)は、18歳以上で登録や帰化など任意かつ正式な行為により外国籍を取得した市民について、政府が命令により市民権を剥奪できると定めます。同条(2)により、市民でなくなるのは命令の日からです。自動的に失うわけではない点が、日本側の仕組みと異なります。135条は、外国当局にパスポートの発給や更新を申請した場合、外国発給のパスポートを渡航文書として使った場合も剥奪の事由になると定め、外国での投票を外国人の権利行使とみなしています。

日本国籍はいつ、どう失うか

国籍法11条1項により、シンガポール市民権を取得した時点で日本国籍を失います。届出を出したから失うのではありません。届出は事後の報告です。

戸籍法103条は、本人、配偶者、四親等内の親族に対し、国籍喪失の事実を知った日から1か月以内、知った日に国外にいるときは3か月以内に、国籍喪失を証する書面を添えて国籍喪失届を提出する義務を課しています。届出により、同法23条に基づき従前の戸籍から除籍されます。

在シンガポール日本国大使館は、シンガポールで帰化した場合の国籍喪失届に、有効な日本旅券の原本と、シンガポールのCertificate of Singapore Citizenshipの原本の提出を求めています。旅券は無効化のうえ返却されます。

日本に住み続けるには在留資格がいる

日本国籍を失うと外国人になります。入管法22条の2により、日本に在留できるのは国籍を失った日から60日までで、それを超えて在留する場合は当該事由が生じた日から30日以内に在留資格の取得を法務大臣に申請しなければなりません。元日本人向けの特別な永住資格はありません。特別永住者は、平和条約により日本国籍を離脱した者などを対象とする別の制度です。

入管法別表第二の「日本人の配偶者等」は、条文上「日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者」と定義されています。出生時に父または母が日本国籍を有していた人は、条文の文言上この類型に当たりうる読み方ができます。ただし出入国在留管理庁はこの当てはめを公表しておらず、いずれにせよ申請と審査を経て許可される在留資格です。帰化や認知で日本国籍を得た人は「出生した者」に当たりません。

兵役はどうなるか

成人してから市民権を得た男性について、MINDEFは、30代や40代の年齢ではfull-time NSに適さず、市民権の取得前に便益を享受していないため入隊させないとしています。

注意が要るのは一緒に市民権を取る男子の子です。市民と永住者の男子は16歳半で登録し、18歳で入隊の対象になります。ICAは、大学進学のための延期は認められず在学中でも学業を中断して入隊しなければならないと明記しています。

憲法128条(2)(b)により、Enlistment Act 1970の対象者が市民権を放棄しようとする場合、full-time NSを履行したか、3年以上のoperationally ready national serviceを務めたか、政府の定める条件を満たさない限り、政府は放棄の登録を保留できます。兵役を履行せずに市民権や永住権を放棄した場合、本人だけでなく家族の長期在留許可の申請、スポンサー資格、REPの更新、将来の市民権や永住権の申請にも重大な不利益が及ぶとICAは明記しています。Enlistment Act違反の罰則はS$10,000以下の罰金または3年以下の拘禁、もしくはその併科です。

国籍で実際に変わるもの、変わらないもの

項目永住者市民
CPFの拠出率(3年目以降、55歳以下)合計37%合計37%
選挙権なし21歳以上で選挙人名簿に登録
新築HDB(BTO)の主申請者不可可
公立病院の専門外来の補助一律25%30%から70%
ABSD(1件目の住宅)5%0%
兵役(男子の子)対象対象

CPFの拠出率は永住権3年目以降と市民で同じです。国籍を取ればCPFが有利になるという説明がありますが、差が出るのは永住権1年目と2年目の軽減率の期間だけで、長期の永住者にとって国籍によるCPF上の利点はありません。

パスポートのビザ免除国数がよく引用されますが、これはHenleyなどの民間指数の集計です。ICAや外務省が公式に免除国数を公表しているわけではありません。

どれくらいの人が取得しているか

2024年に付与された市民権は22,766件、永住権は35,264件です。市民権取得者の出身地域は東南アジア64.3%、その他アジア32.8%、その他2.9%で、国別の内訳は公表されていません。日本人に限った人数を示す公的な統計は確認できませんでした。

なおPopulation in Brief 2025の22,766件は、出生による市民権を除外した数字です。2024年はこれとは別に1,409人の海外出生児が出生により市民権を付与されています。年次で比較するときは定義の変更に注意が要ります。

政府は、成人の新市民はすべて永住者の中から出ており、市民権を申請する前に永住権を取得しなければならないと明記しています。永住権を経ずに市民となるのは、市民の子などの未成年に限られます。永住権の取り方については 永住権(PR) をご覧ください。

日本語の情報でよく間違っているところ

  • ✓国籍喪失届を出さなければ日本国籍は残る。喪失は国籍法11条1項により外国籍を取得した時点で生じます。届出は事後の報告です。
  • ✓日本国籍を失っても日本には今までどおり住める。外国人になるため在留資格が必要です。在留できるのは60日までで、30日以内に申請しなければなりません。
  • ✓永住権を2年持てば国籍が取れる。2年はICAが公表する申請受付の入口条件です。憲法の本則は12年のうち10年の居住で、2年での申請は免除規定の運用にあたります。承認は政府の裁量です。
  • ✓市民権試験や英語試験がある。MHAは所定の試験は存在しないと明言しています。義務はSingapore Citizenship Journeyの修了です。
  • ✓男性は国籍を取ると兵役に行く。MINDEFは成人で市民権を得た男性は入隊させないとしています。対象になるのは一緒に市民権を取る男子の子です。
  • ✓国籍を取ればCPFが有利になる。拠出率は永住権3年目以降と市民で同じです。
  • ✓シンガポール側でも旧国籍が自動的に消える。日本側は取得の瞬間に自動で失いますが、シンガポール側の憲法134条の剥奪は政府の命令によるもので、効力は命令の日から生じます。

本記事の情報について

2026年9月時点のICA、シンガポール憲法、MHA、MINDEF、CPF、Population in Brief 2025、および日本の国籍法、戸籍法、入管法、在シンガポール日本国大使館の公開情報に基づいています。国籍の得喪は人生に不可逆の影響を与えます。判断の前に、在シンガポール日本国大使館とICAの双方に必ずご確認ください。

参照した一次情報

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