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2026-09 更新

日星租税条約

日本とシンガポール間の二重課税防止条約の概要と活用ポイント。

本記事の情報は参考目的です。制度は変更される場合があります。最新情報は国税庁・IRAS(内国歳入庁)の公式サイトでご確認ください。

日星租税条約とは

日本とシンガポールの間には租税条約が締結されており、同一の所得に対して両国で二重に課税されることを防ぐための規定が設けられています。

主な内容

所得の種類取り扱い
事業所得一方の国にPE(恒久的施設)がある場合のみ課税
給与所得居住地国で課税が原則。勤務地国でも課税できるが、連続する12か月で183日以内・雇用者が勤務地国の非居住者・勤務地国の恒久的施設が負担しない、の3要件を満たせば居住地国のみ
役員報酬法人の所在地国で課税できる。日本法人の役員として受ける報酬は国外勤務分も日本で20.42%が源泉徴収される
配当個人が受け取る場合の上限は15%(5%は議決権株式の25%以上を6か月保有する法人株主のみ)。日本の国内法では上場株15.315%、3%以上保有や非上場株は20.42%のため、届出で15%に下がる
利子上限10%
不動産所得不動産所在地で課税
キャピタルゲイン原則は居住地国で課税。ただし下記の例外あり

キャピタルゲインの例外に注意

株式等の譲渡益は原則としてシンガポール側でのみ扱われますが、これは残りの財産についての規定です。次のものは日本側に課税権が残ります。

  • ✓日本国内にある不動産の譲渡
  • ✓日本国内の恒久的施設(PE)の事業用資産の譲渡
  • ✓日本国内の不動産を主な財産とする非上場法人の株式等(組合・信託の持分を含む)の譲渡
  • ✓事業譲渡類似の株式譲渡。条約上は、譲渡者と関連者の保有が譲渡年中のいずれかの時点で発行済株式の25%以上、かつ譲渡年中に5%以上を譲渡した場合に日本が課税できる。日本の国内法(所得税法施行令第281条)は25%の判定を「譲渡年以前3年内」で行うため条約より広い。条約が課税を認めない範囲では日本の課税は制限されると考えられるが、国税庁の明示的な見解は確認できていない。税率は非居住者の申告分離課税で15.315%

最後の例外は、自社株を保有するオーナー経営者に直接関わります。移住後に自社株を売却しても日本で課税される場合があるため、株式の保有割合と譲渡計画は事前に確認が必要です。

所得の種類ごとに、どちらの国で課税されるか

シンガポールの居住者になった後に日本から受け取る所得は、シンガポール側では原則非課税です。問題は日本側の課税が残るかどうかで、所得の種類によって分かれます。

所得日本シンガポール
日本の不動産の賃料20.42%が源泉徴収され、非居住者として総合課税で確定申告(借主が居住用に借りる個人の場合は源泉なし)非課税
日本の不動産の売却譲渡所得として確定申告。対価から原則10.21%が源泉徴収される非課税
日本株の配当届出書を出せば条約の上限15%。出さなければ国内法の税率で源泉非課税
日本法人の役員報酬国外で働いた分も国内源泉所得として20.42%が源泉徴収される非課税
日本の退職金居住者だった期間の勤務に対応する部分に20.42%が源泉徴収される。居住者として受けたものとみなして計算し直す選択課税もある。一時金の退職手当を条約第18条の退職年金として扱えるかは解釈が分かれるため要確認非課税
シンガポールの給与課税なし居住者は累進、非居住者は15%か累進の高いほう

日本で課された税は、シンガポールで課税されないぶん外国税額控除で取り戻す相手がありません。これが「シンガポールで非課税でも日本側の課税が終わっていない所得がある」ということの実際の中身です。なお源泉徴収の税率は令和9年分以後、復興特別所得税の一部が防衛特別所得税に組み替わりますが、合計の税率は変わりません。

条約の適用を受ける手続き

日本側の手続きは「租税条約に関する届出書」を、最初に支払を受ける日の前日までに支払者を経由して税務署に提出することです。非上場株式の配当は様式1、年金は様式9で、支払者ごとに作成します。上場株式の配当は証券会社経由で出す特例届出書で、こちらは提出期限の定めがなく、提出した日以後に支払われる配当から適用されます。届出をしないと国内法の税率で源泉されますが、還付請求書(様式11)で取り戻せます。

IRASの居住証明書(Certificate of Residence)は、シンガポールの税務上の居住者であることを示す書面で、myTax Portalから申請でき、発行まで2〜3週間かかります。シンガポールの居住者と認定されない年は取得できないことがあります。有効期間1年以上のEPを持つ人は当初から居住者として扱われるため多くの場合は取得できますが、移住初年度は早めに申請して確認しておくと安全です。

日本の公的年金の扱い

条約第18条は、過去の勤務に関して支払われる退職年金を受領者の居住地国のみで課税するとしています。日本の国民年金・厚生年金がこの条項で日本の課税を免れるかどうかは、国税庁のシンガポール向けの明示的な回答が確認できていません。年金を受け取りながら移住する場合は、年金事務所と税理士に事前に確認してください。

注意

本記事は2026年8月時点の情報です。租税条約の内容は改定される場合があります。適用の可否は個別の事情で変わるため、実際の判断は条約の条文と専門家の確認によってください。

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