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はじめに 2026-09 更新

シンガポール税制の基本

所得税・法人税・キャピタルゲイン・相続税を日本と並べ、移住しても日本の課税が残る所得と、移住前後で税がどう変わるかを整理。

本記事の情報は参考目的です。制度は変更される場合があります。最新情報は国税庁・IRAS(内国歳入庁)の公式サイトでご確認ください。

シンガポールの税制はなぜ軽いのか

税目の数が少なく、日本にある税の多くが存在しません。財務省が主要税目として挙げるのは個人所得税・法人所得税・GST・財産税・印紙税の5つです。キャピタルゲイン税はなく、遺産税は2008年2月15日以後の死亡について廃止され、贈与税という税目もありません。住民税に相当する地方税もなく、社会保険料にあたるCPFは外国人が拠出対象外です。

つまりEPで働く日本人が日常的に払う税は、所得税とGSTの2つに絞られます。ただし、それは日本の課税から自由になったことを意味しません。この記事では、日本との比較表を正確に読むための前提と、移住の前後で税がどう変わるかを整理します。

日本との比較

税目シンガポール日本
個人所得税居住者は累進で最高24%(YA2024以降、課税所得S$1,000,000超の部分)最高45%(課税所得4,000万円超の部分)に復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加わる
住民税なし所得割10%+均等割(東京都区部で年5,000円)
株式の譲渡益個人の投資は非課税上場株式等で20.315%(居住者。所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
相続税なし(遺産税は2008年2月15日以後の死亡で廃止)最高55%(法定相続分に応ずる取得金額6億円超の部分)
贈与税なし(不動産の贈与には印紙税、住宅なら追加印紙税も。株式の贈与には0.2%の印紙税)最高55%(基礎控除後3,000万円超の部分。18歳以上の直系卑属への特例税率は4,500万円超)
法人税一律17%(部分免税で実効はさらに低い)実効29.74%(2026年4月以後に開始する事業年度で防衛特別法人税の対象となる法人は30.64%)
消費税GST 9%(単一税率、食料品の軽減なし)10%(食品などは軽減8%)
社会保険料CPFは外国人が対象外。本人・雇用主とも拠出なし厚生年金・健康保険を労使で負担

数字はいずれも2026年9月時点の現行制度です。シンガポールの所得税は個人所得税で税率表と控除を、日本の出国税は出国税で扱っています。

この表で間違えやすいこと

移住しても日本の課税が終わらない所得がある

日本の非居住者になると、日本で課税されるのは国内源泉所得だけになります。裏を返せば、国内源泉所得には移住後も日本の税がかかります。日本の不動産の賃料は20.42%が源泉徴収されたうえで確定申告が必要で、日本法人の役員として受け取る報酬は国外で働いた分も国内源泉所得として20.42%が源泉徴収されます。シンガポールには譲渡益課税がないので、日本で課された税を外国税額控除で取り戻す受け皿もありません。

オーナー経営者に直接関わるのが自社株の売却です。譲渡した年以前3年以内のいずれかの時点で特殊関係株主等が発行済株式の25%以上を保有し、その年に5%以上を譲渡すると、非居住者でも日本で課税されます(事業譲渡類似)。日星租税協定もこの日本の課税権を残しているため、条約による救済は期待できません。詳細は日星租税条約で扱っています。

相続税と贈与税は移住後も10年は日本の課税が続く

表の「なし」はシンガポール側に税がないという意味で、日本の相続税がかからなくなるという意味ではありません。日本国籍を持つ人の場合、相続開始(死亡)の日から遡って10年以内に被相続人と相続人のいずれも日本に住所を持たなかったときに限って、国外財産が課税対象から外れます。日本にある財産はその後も課税対象です。被相続人が出国税の納税猶予を受けている場合は、10年以内に日本に住所があったものとみなされます。贈与税も同じ構造です。

移住直後に日本の親から相続する場合は、親が日本に住所を持つため、移住した子の国外財産まで含めて日本の相続税の対象になります。資産承継を目的に移住を考えるなら、10年という時間軸と、誰がどこに住んでいるかの組み合わせで判定される点を先に確認してください。

「非居住者になる」は住民票の話ではない

日本の所得税法は居住者を「国内に住所を有し、または現在まで引き続き1年以上居所を有する個人」と定めていて、滞在日数の基準は条文にありません。国税庁は、外国に1年の半分以上滞在していても日本の居住者になる場合があると明記しています。一方で、1年以上の予定で国外で職業に従事するために出国する人は、出国の時から国内に住所を有しない者と推定されます(所得税法施行令第15条)。判断の軸は住民票でも日数でもなく、生活の本拠がどこにあるかです。日本の居住者・非居住者の判定で扱っています。

移住の前後で税はどう変わるか

時期日本シンガポール
出国前出国税の対象かを確認(対象資産1億円以上)。所得税は税務署、住民税は市区町村に納税管理人を届け出る。給与所得者は住民税の残額を一括徴収で払える(1〜4月の退職は原則として一括徴収)雇用契約の開始。EPの有効期間が1年以上なら当初から居住者として扱われる
出国した年居住者だった期間の全所得と、出国後の国内源泉所得を合わせて翌年3月15日までに申告(納税管理人を届け出た場合)到着年に183日未満で、2年・3年の特例にも当たらなければ非居住者として課税される
翌年以降1月1日に住所がなければ住民税は課されない。日本で課税されるのは国内源泉所得のみ居住者として累進課税。国外から受け取る所得は原則非課税で申告も不要
シンガポールを離れるとき帰国すれば施行令第14条で住所ありと推定される。5年以内の帰国なら出国税は取り消せる雇用主が1か月前までにIR21を提出し、給与を留保して所得税を精算する。後払いは残らない

住民税の扱いは出国が年末か年明けかで前年1年分の所得の10%が変わります。シンガポールに住民税はあるかで試算つきで扱っています。

シンガポールで不動産を買う場合の壁

移住後に住宅を買おうとすると、税制の軽さとは別の壁があります。外国人が住宅用不動産を買う場合の追加印紙税(ABSD)は購入価格の60%です(2023年4月27日以降)。S$200万の物件ならABSDだけでS$120万になります。日本はABSDが軽減される自由貿易協定の対象国ではありません。永住権を取れば1軒目は5%になりますが、適用は購入日時点の身分で決まります。

これに買主印紙税(BSD、最高6%)が加わり、2025年7月4日以降に買った住宅を4年以内に売ると売主印紙税(SSD)が16%から4%かかります。キャピタルゲイン非課税と並べて考えると、住宅は「値上がりしたら売る」対象ではなく、長く住む前提で買うものだという設計が見えてきます。

この記事で書いていないこと

税務は個人の状況によって結論が変わります。この記事は制度の構造を示すもので、個別の判断は税理士への相談が必要です。数値は国税庁・総務省・IRAS・MOFの2026年9月時点の掲載内容に基づいています。

移住前後の税務の手順を時系列で確認する

出国前に済ませることと着任後にやることを、家族構成と目的に合わせて一覧にします。質問は5つ、登録なしで使えます。

移住ロードマップを作る

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