本記事の情報は参考目的です。制度は変更される場合があります。最新情報は国税庁・IRAS(内国歳入庁)の公式サイトでご確認ください。
シンガポールに住民税はない
IRAS(内国歳入庁)が所管する税目は、個人所得税・法人所得税・財産税・GST・印紙税・源泉徴収税などで、日本の住民税にあたる地方税や居住者税はありません。財務省も主要税目として個人所得税・法人所得税・GST・財産税・印紙税の5つを挙げていて、地方税の記載がありません。
財産税(Property Tax)は不動産の所有者に課される税で、賃貸で住む人には関係ありません。EPで働く日本人が日常的に払う税は、所得税とGST 9%の2つです。
ですから「シンガポール 住民税」で調べている人の実際の問いは、シンガポール側ではなく日本側にあります。移住したら日本の住民税はいつまで、いくら払うのか。ここからはその話です。
日本の住民税は1月1日の住所で決まる
個人住民税の賦課期日は1月1日です(地方税法第39条・第318条)。その年の1月1日に日本の市区町村に住所があれば、前年1月から12月までの所得に対する住民税がその年度に課されます。税率は所得割が10%(都道府県民税4%+市区町村民税6%)、均等割は東京都区部で年5,000円(都民税1,000円+特別区民税3,000円+森林環境税1,000円)です。
重要なのは、1月2日以降に出国しても課税は変わらないと総務省が明記していることです。年の途中で出国しても、その年度の住民税は前年の所得に対して全額の納税義務があります。
出国のタイミングで前年1年分の10%が変わる
住民税は前年の所得に対する後払いなので、出国のタイミングで「どの年の所得まで課税されるか」が変わります。東京都区部に住む給与所得者で、課税所得が2,000万円(所得割200万円)の場合で比べます。
| 出国日 | 出国年度分(前年の所得) | 翌年度分(出国年の所得) | 違い |
|---|---|---|---|
| 2026年12月に出国 | 全額の納税義務。残りの月分は退職時に一括徴収 | 2027年1月1日に住所がないため課されない | 2026年の所得に住民税はかからない |
| 2027年1月に出国 | 全額の納税義務。1月退職なので残額は申出の有無にかかわらず一括徴収 | 2027年1月1日に住所があるため課される。2026年1年分の所得に対する約200万円 | 同じ所得でも約200万円多く払う |
2026年の所得に対する住民税は、2027年1月1日に日本に住所があるかどうかで、かかるかかからないかが決まります。年末に出るか年明けに出るかの差が、前年1年分の所得の10%です。もちろん出国の日を税金だけで決めるものではありませんが、この構造を知らずに年明けに出て、6月に届いた納税通知書に驚くという事例は少なくありません。
所得税は別の話
出国前に住民税をどう払うか
給与所得者は残額が一括徴収される
会社員の住民税は6月から翌年5月まで12回に分けて給与から天引きされています(特別徴収)。退職・出国で給与がなくなると、残りの月分をまとめて払うことになります。
- ✓6月から12月に退職する場合は、本人の申出により最後の給与や退職金から残額を一括徴収してもらえる
- ✓1月1日から4月30日までに退職する場合は、最後の給与や退職金が残額を上回れば、申出の有無にかかわらず残額が一括徴収される(地方税法第321条の5)
- ✓一括徴収しない場合は普通徴収に切り替わり、市区町村から本人宛てに納税通知書が届く。出国後は受け取れないため、出国前に全額納付するか納税管理人を置く
納税管理人は市区町村に届け出る
出国までに払いきれない住民税がある場合は、日本に住む人の中から納税管理人を決めて、住んでいる市区町村に届け出ます(地方税法第300条)。家族・知人・勤め先・税理士法人など誰でもなれます。港区は国外転出の場合は指定を必須としています。
ここで間違えやすいのが、所得税の納税管理人(税務署)とは別の手続きだという点です。所得税は「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」を税務署に、住民税は「納税管理人申告書」などの様式を市区町村に出します。1つ出せば済むわけではありません。様式名は自治体によって違い、渋谷区は「納税管理人申告書兼承認申請書」、千代田区は「納税管理人申告書」です。
1月から6月に出国する人は特に注意が要ります。前年の所得に対する納税通知書は6月初旬に届くため、出国時点では手元に通知がありません。品川区が出国前の届出を求めているのはこのためです。
退職金の住民税は受け取る年で変わる
退職金に対する住民税は、他の所得と分けて支払時に10%が特別徴収されます(現年分離課税)。課税されるのは、退職金の支払日が属する年の1月1日に日本に住所がある人です。出国した翌年に退職金を受け取れば、住民税はかかりません。所得税側では、居住者だった期間の勤務に対応する部分が国内源泉所得として20.42%源泉徴収されます。
転出届と課税の関係
国外転出届は住民基本台帳法第24条に基づく届出で、1年以上の海外滞在が対象です。出張や旅行など短期の滞在では出しません。受付を始める日は市区町村で違い、練馬区や江東区は転出予定日の14日前からです。
ただし、転出届を出せば住民税の課税が終わるわけではありません。地方税法第294条第3項は、住民基本台帳に記録がなくても実際に住所があれば課税できると定めています。江戸川区は、出国の期間・目的・出国中の居住状況から「単に旅行にすぎないと認められる場合」は出国前の住所に課税すると明記しています。1月1日時点の住所は、届出の有無ではなく生活の実態で判定されます。
逆に、日本に自宅や事務所を残して移住する場合は、住所がなくても家屋敷や事務所があることを理由に均等割(東京都区部で都民税1,000円+区民税3,000円)が課されることがあります(地方税法第294条第1項第2号)。東京都主税局は「借りている場合も含むが、貸している場合は除く」としているので、自宅を賃貸に出して移住するなら均等割は残りません。空き家のまま残す場合は転出前に自治体に確認してください。
セットで動く手続き
- ✓国民健康保険は転出届で資格を失い、保険料は月割で精算される(資格喪失日の扱いは自治体で異なる)
- ✓国民年金は海外に住むと強制加入から外れる。日本国籍なら市区町村の窓口で任意加入を申し込め、令和8年度の保険料は月17,920円。納めれば将来の老齢基礎年金に反映される
- ✓ふるさと納税の住民税分の控除は翌年度の住民税から差し引かれる仕組みなので、翌年1月1日に住所がなく翌年度の住民税が課されない場合は控除が生じない。ワンストップ特例は控除の全額を住民税から差し引く仕組みのため、所得税分の控除を受けるには確定申告が必要になる
- ✓マイナンバーカードは、日本国籍なら転出予定日の前日までに手続きをすれば国外転出後も継続利用できる(2024年5月27日以降)
移住後にシンガポールで払う税
日本の住民税に対応する税はありません。給与に対する所得税は居住者なら累進で最高24%、日常の消費にGST 9%がかかります。控除の使い方や出国時の税務クリアランスは個人所得税で、税制全体の日本との比較はシンガポール税制の基本で扱っています。
自治体ごとの違い
移住前後の税務の手順を時系列で確認する
出国前に済ませることと着任後にやることを、家族構成と目的に合わせて一覧にします。質問は5つ、登録なしで使えます。