本記事の情報は参考目的です。制度は変更される場合があります。最新情報はACRA(会計企業規制庁)・IRAS(内国歳入庁)の公式サイトでご確認ください。
シンガポールの法人税は一律17%です。IRASは flat rate of 17% と書いていて、17%は上限ではなく課税所得に適用される唯一の税率です。最高17%という表現を見かけますが、所得が少なければ税率が下がる仕組みではありません。
実際の負担が下がるのは、税率ではなく免税枠によってです。新設法人なら実効税率は4%台から始まります。
税目の一覧
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法人税率 | 一律17% |
| キャピタルゲイン税 | 原則なし(2024年以降、多国籍グループの事業体による国外資産売却益が課税される例外あり) |
| 配当への課税 | なし(one-tier systemにより法人税が最終税) |
| 配当への源泉徴収税 | なし |
| GST(消費税) | 9%(2024年1月1日以降) |
| 源泉徴収税 | 非居住者への一定の支払いに適用あり |
新設法人の免税(SUTE)
最初の3つの連続する賦課年度に適用されます。課税所得の最初のS$100,000について75%、次のS$100,000について50%が免除され、1賦課年度あたりの上限はS$125,000です。
要件は3つです。
- ✓シンガポールで設立された会社であること
- ✓当該賦課年度にシンガポールの税務上の居住法人であること
- ✓基準期間を通じて株式を直接実質保有する株主が20名以下で、全員が個人であるか、個人株主が1名以上で発行済普通株式の10%以上を保有していること
投資持株会社と不動産開発会社は対象外で、部分免税のみが適用されます。
欠損の年も3年のカウントに入る
部分免税
SUTEを使う会社を除くすべての会社に適用されます。課税所得の最初のS$10,000について75%、次のS$190,000について50%が免除され、上限はS$102,500です。
実効税率
| 課税所得 | SUTE適用時の税額 | 実効税率 | 部分免税時の税額 | 実効税率 |
|---|---|---|---|---|
| S$100,000 | S$4,250 | 4.25% | S$8,075 | 8.08% |
| S$200,000 | S$12,750 | 6.38% | S$16,575 | 8.29% |
| S$1,000,000 | - | - | S$152,575 | 15.26% |
所得が増えるほど17%に近づきます。免税枠は定額なので、規模が大きくなると効きが薄れる設計です。
賦課年度の数え方
シンガポールの法人税は前年基準です。決算期間である基準期間の所得に対して、翌年が賦課年度になります。決算期末は会社が自分で決めるもので、IRASが指定するものではありません。
設立初年度は分割されることがあります。基準期間は12か月を超えられないため、たとえば2023年7月1日に設立して12月決算とし、最初の決算を2024年12月31日に締めた場合、利益は2つの賦課年度に配分されます。2023年7月1日から12月31日がYA2024、2024年の1年分がYA2025です。最初の賦課年度はYA2025ではなくYA2024になります。SUTEの3年のカウントもここから始まります。
申告の期限
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| ECI(見積課税所得) | 決算期末から3か月以内 |
| 法人税申告(Form C-S等) | YA2026分は2026年11月30日まで |
ECIは、年間revenueがS$5 million以下かつECIがゼロであれば提出が免除されます。両方を満たす必要があり、片方だけでは免除されません。会社の自己判定で、IRASへの届出や確認は不要です。
申告書は3種類あります。Form C-Sは、シンガポールで設立され、年間revenueがS$5 million以下、所得がすべて17%課税で、資本控除の繰戻しやグループリリーフ、投資控除、外国税額控除、源泉徴収税額の申告をしない会社が使えます。Form C-S (Lite)はさらに年間revenueがS$200,000以下の会社向けで、6項目だけで申告できます。要件を満たさない会社はForm Cを使います。
Form C-SとForm C-S (Lite)では財務諸表と税務計算書の提出が不要ですが、作成と保管は必要で、IRASの求めに応じて提出します。遅延や未提出には最大S$5,000の罰金が科されることがあります。
2026賦課年度のリベート
YA2026は法人税リベートが50%に引き上げられました。当初の発表は40%でした。あわせて、2025年にシンガポール人または永住権保持者の従業員へCPF拠出を行った活動中の会社に支給されるCIT Rebate Cash GrantがS$1,500からS$2,000へ増額されています。取締役を兼ねる株主への拠出はこの判定に含まれません。リベートとcash grantの合計上限はS$40,000です。
GST登録が必要になるとき
税率は9%です。登録義務が生じるのは2つの場合です。
- ✓遡及ベース:課税売上が暦年末時点でS$100万を超えた場合。翌年1月1日から30日以内に申請し、3月1日に登録されます。
- ✓将来ベース:今後12か月の課税売上がS$100万を超えると合理的に見込まれる場合。予測日から30日以内に申請します。2025年7月1日以降に生じた予測については、予測日から2か月後に登録されます。
会計記録の保存
保存義務は二重にかかります。会社法199条は、取引が完了した事業年度の末日から5年以上の保存を求め、違反には最大S$10,000の罰金または12か月以下の拘禁が科されえます。IRASは関係する賦課年度から5年以上の保存を求め、違反には最大S$5,000の罰金です。
配当を日本で受け取るとき
シンガポールはone-tier corporate tax systemを採用しています。法人が払った法人税が最終税なので、居住法人が支払う配当に株主側での課税はなく、シンガポールは配当に源泉徴収税を課しません。租税条約に配当の限度税率が定められている場合も同じです。
日本側では課税されます。日本の居住者がシンガポール法人から受け取る配当は配当所得として課税対象です。国税庁は外国法人から受ける配当等は配当控除の対象にならないと明示しているため、配当控除は使えません。
日本の居住者のまま設立する場合の注意
この記事で最も注意が要る部分です。シンガポールの実効税率が低いことは、日本側では別の意味を持ちます。
日本の外国子会社合算税制は、居住者や内国法人が合計で50%超を直接および間接に保有するか実質的に支配する外国法人を外国関係会社とします。そのうえで、租税負担割合が一定の水準を下回ると、外国法人の所得を日本側の所得に合算して課税します。
| 区分 | 該当するもの | 租税負担割合の基準 | 合算のしかた |
|---|---|---|---|
| 特定外国関係会社 | ペーパーカンパニー等 | 27%未満 | 会社単位で合算 |
| 対象外国関係会社 | 経済活動基準を満たさない会社 | 20%未満 | 会社単位で合算 |
| 部分対象外国関係会社 | 上記以外 | 20%未満 | 受動的所得を部分合算 |
27%という数字は令和6年4月1日以後に開始する事業年度のもので、それ以前は30%でした。
この表とシンガポールの実効税率を並べると、問題の形が見えます。新設法人の免税を使った実効税率は4%台から8%台で、いずれの基準も下回ります。実体のない会社と判定されれば会社単位で合算され、シンガポールで払った低い税率の意味がなくなります。
分かれ目は2つです。1つは自分が日本の居住者かどうかで、国税庁は住所を生活の本拠かどうかで客観的に判定するとしています。もう1つは会社が経済活動基準を満たすかどうかです。事務所があり、常勤の役職員がいて、そこで事業が管理運営されているかが問われます。
シンガポール側の税務上の居住者判定も同じ問題を持つ
日本側で合算課税を受けず、シンガポール側で居住法人として扱われるには、実体を伴った移住が前提になります。個別の判定は事実関係で変わるため、設立前に日本とシンガポールの双方の税務専門家に確認してください。日本側の居住者判定については 日本の居住者・非居住者の判定 にまとめています。
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