本記事の情報は参考目的です。制度は変更される場合があります。最新情報はACRA(会計企業規制庁)・IRAS(内国歳入庁)の公式サイトでご確認ください。
Pte. Ltd. は Private Company Limited by Shares の略です。Pte が Private、Ltd が Limited を縮めたもので、日本の株式会社にあたる形態を指します。読み方は「プライベート・リミテッド」で、会社名の末尾に付きます。
この表記は慣習ではなく法律で決まっています。会社法1967年27条は、有限責任会社の名称の末尾に Limited を付けること、非公開会社ではその直前に Private を入れること、そしてそれぞれを Pte. と Ltd. と略記してよいことを定めています。
3つの語がそれぞれ意味するもの
| 語 | 意味 | 法的な中身 |
|---|---|---|
| Private | 非公開会社 | 定款で株式の譲渡を制限し、社員を50名以下に限る(会社法18条) |
| Limited | 有限責任 | 社員の責任が保有株式の未払込額に限られる(会社法4条) |
| Company | 法人 | 設立日から法人となり、訴え訴えられる能力と永続性を持つ(会社法19条) |
有限責任とは、会社が負債を抱えても株主の個人財産が取り立ての対象にならないという意味です。株主が負うのは、引き受けた株式のうちまだ払い込んでいない金額までです。全額を払い込んでいれば、それ以上の責任は生じません。
社員を50名以下に数えるとき、共同保有者は1名と数えます。在職中と退職後の(元)従業員株主はこの数に含めません。
Exempt Private Company(EPC)
Pte. Ltd. の中でも、法人が直接にも間接にも株式に受益権を持たず、社員が20名以下の会社をExempt Private Companyと呼びます。日本から個人で設立する会社の多くはこれに当たります。
実務上の違いは書類の提出です。支払能力があるEPCは、財務諸表をACRAに提出しなくてよくなります。年次申告のときにオンラインで支払能力を宣言します。提出が免除されるだけで、作成そのものが免除されるわけではありません。
法人株主を1社でも入れるとEPCには該当しません。親会社を通じて持つ設計にすると、この扱いを失います。
他の事業形態との違い
| 形態 | 法人格 | 責任の範囲 | 課税 | ACRAの登録料 |
|---|---|---|---|---|
| 個人事業(Sole Proprietorship) | なし | 所有者が無限責任 | 所有者の個人所得税率 | 1年 S$115、3年 S$175 |
| パートナーシップ | なし | パートナーが無限責任 | 各パートナーの属性に応じて | 1年 S$115、3年 S$175 |
| LP(Limited Partnership) | なし | ゼネラルパートナーが無限責任 | 各パートナーの属性に応じて | 1年 S$115、3年 S$175 |
| LLP | あり | 他パートナーの債務に個人責任を負わない | 各パートナーの属性に応じて | S$115 |
| Pte. Ltd. | あり | 株主は会社の債務に個人責任を負わない | 法人税率17% | S$315 |
法人格があるかどうかが、この表で最も重いところです。個人事業とパートナーシップには法人格がなく、事業の負債は所有者の負債です。LLPと会社は別人格なので、そこが切り離されます。
課税も分かれます。個人事業の利益は所有者の個人所得税率で課税されます。シンガポールの個人所得税の最高税率は法人税率より高いため、利益が大きくなるほど会社形態のほうが有利になります。
海外の会社がシンガポールに出るときの4つの選択肢
ACRAは外国企業の進出を4つに整理しています。日本の会社がシンガポールに拠点を作る場合の判断材料です。
| 形態 | 法人格 | 責任 | 課税 |
|---|---|---|---|
| 駐在員事務所(Representative Office) | なし | 収入を得られない | 法人税の対象外 |
| 子会社(Subsidiary) | あり | 子会社の資産の範囲 | シンガポール法人として課税 |
| 支店(Branch) | なし | 親会社が全責任を負う | 支配と管理がシンガポールになければ税務上の居住者にならない |
| 再ドミサイル | あり | 外国会社そのものがシンガポール会社になる | シンガポール法人として課税 |
支店と子会社の差は課税に出ます。IRASは会社の税務上の居住地を設立地ではなく、事業の支配および管理が行われる場所で判定します。支配および管理とは、方針や戦略といった重要事項の意思決定のことです。支店は親会社の延長なので、原則として税務上の居住者になりません。居住者でないと、新設法人の免税などシンガポールの税制優遇を使えません。
駐在員事務所は商業分野をEnterprise Singaporeが所管します。銀行と金融と保険はMAS、外国法律事務所はMinLawです。活動は市場調査と実現可能性調査に限られ、親会社のための収益獲得活動やサービス提供は一切できません。有効期間は1年で、延長は個別審査により通算最長3年まで、処理手数料は年S$200です。申請には親会社の売上US$250,000以上と設立3年以上が求められ、事務所の人員は4名までです。
会社の種類は7つある
ACRAは会社を7種類に分類しています。株主数の上限はExempt Private Companyが20名、Private Companyが50名、Public Companyは上限なしです。公開会社が株式を販売する前にはMASへ目論見書を登録する必要があります。日本から個人で設立する場合、選ぶのは実質的にPrivate Company Limited by Shares(そのうちEPCに当たるもの)の一択になります。
監査を受けなくてよい条件
会社法205C条と第13附則の small company の基準で決まります。その事業年度を通じて非公開会社であることに加えて、直前2事業年度のそれぞれについて次の3つのうち2つを満たす必要があります。
- ✓売上がS$1,000万以下
- ✓期末の総資産がS$1,000万以下
- ✓期末の従業員が50人以下
設立から3事業年度目に達していない会社は、第1事業年度または第2事業年度の単年で判定します。親会社や子会社の立場にある会社は、自社がsmall companyであることに加えてグループ全体がsmall groupでなければ免除を受けられません。
UENとは
登記が完了すると発行される、政府手続きで使う事業体の番号です。ACRA登記のローカル会社は「設立年4桁と連番5桁とチェック文字1桁」の10桁で、199012345Xのような形になります。個人事業とパートナーシップは9桁、LLPや外国会社や駐在員事務所はT08LL1234Aのような形式です。
通常のUENは無料で付番されます。覚えやすい番号を選べる有料のSpecial UENもあり、同じ数字の連続や8を含む組み合わせがS$3,000、それ以外の反復パターンがS$1,000です。年号と末尾のチェック文字はシステムが決めるので変更できません。
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