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2026-08 更新

ヘルパー(家事労働者)を雇う

雇用税・給与・保険の実額と、雇用主として負う義務を整理します。

本記事の情報は参考目的です。制度は変更される場合があります。最新情報は各提供元の公式サイトでご確認ください。

費用の全体像

外国人家事労働者(MDW)を雇うことは、単にサービスを買うのではなく、シンガポールの制度上「雇用主になる」ことを意味します。給与のほかに雇用税と保険が発生し、食事や医療費まで雇用主の負担になります。

制度上確実に発生する下限は、給与と雇用税だけで月S$950です。フィリピン人を新規で雇う場合の最低月給S$650に、1人目の雇用税S$300を足した金額です。これに保険料、食費、6か月ごとの健康診断費、光熱費の増加が上乗せされます。

費目金額性質
給与国籍により月S$550〜650が下限送り出し国が定める。シンガポールに法定最低賃金はない
雇用税(levy)1人目 月S$300、2人目以降 月S$450MOMへ翌月17日までに納付
医療保険年間補償S$60,000以上雇用主に加入義務。保険料をMDWに負担させることは禁止
傷害保険年間保険金額S$60,000以上同上
食事・住居・医療費実費歯科と業務外の病気・けがも雇用主負担
セキュリティボンドS$5,000銀行または保険会社の保証。現金で積むものではない
SIP(本人の入国後研修)S$76.40〜92.65初回来星のMDWのみ。到着後7日以内
EOP(雇用主の事前研修)S$29.98〜76.30初めて雇う雇用主のみ。申請の2営業日前まで

金額はいずれも2026年8月時点のMOM掲載値です。このほかエージェントを使う場合の手数料がかかりますが、雇用主が支払う額に上限規制はなく、相場の話になります。

雇用税は日本人世帯だと軽減されない

雇用税には月S$60の軽減税率がありますが、適用条件はいずれもシンガポール国籍の家族がいることです。16歳未満のシンガポール国籍の子、67歳以上のシンガポール国籍の高齢者、医師が介助を要すると証明した障害者が対象で、対象者1人につきMDW1人、1世帯で最大2人までとなっています。

つまりEPで滞在する日本人世帯は、小さな子どもがいても通常は満額の月S$300を払い続けることになります。ここを軽減後の金額で見積もると年間で約S$2,880ずれます。

納付を止めるとWork Permitが消える

雇用税は翌月17日までの納付です。2か月連続で未納だとMDWのWork Permitが翌月に取り消されます。MDWが7日以上連続で海外休暇を取った場合や入院した場合は免除を申請できますが、それぞれ暦年で60日が上限です。

給与は国籍で下限が変わる

シンガポールには家事労働者を含めて法定最低賃金がありません。MOMの給与ガイドラインにも金額の定めはなく、「MOMに申告した額を下回ってはならない」と規定されているだけです。

実際の下限をつくっているのは送り出し国側です。国籍を選ぶと総コストが変わります。

国籍最低月給備考根拠
フィリピンS$6502025年10月21日以降に処理される契約。契約前に「Know Your Employer」のビデオ面談が必要在シンガポール移民労働者事務所
スリランカS$550別途、返金される保証金S$1,350と契約処理手数料S$85在シンガポール・スリランカ高等弁務官事務所
インドネシアS$550前後大使館が定めるとされるが公開情報では確認できず人材紹介業界の相場
ミャンマーS$500前後同上人材紹介業界の相場

給与は少なくとも月1回、給与計算期間の末日から7日以内に支払います。MOMは本人名義口座への振込を推奨しており、MDWが希望した場合は振込にしなければなりません。2019年1月からは、本人が望んだ場合でも雇用主が給与を預かることは禁止されています。

雇用主が負う義務

日本の家事代行との最大の違いがここです。MOMはupkeep and maintenance(生活の維持)として、次を雇用主の義務と定めています。

  • 食事の提供(十分な量と回数)
  • 住居の提供。日差し・雨・強風から守られ、マットレス・枕・毛布を最低限そろえ、十分な換気があること
  • 医療費と歯科費用。業務に起因しない病気やけがの治療費も雇用主の負担
  • 雇用終了時の帰国航空券(受託手荷物込み)と、母国の最寄り空港からの乗り継ぎ交通費

家財の破損や勤務態度を理由に給与から控除することは、いっさい認められていません。日本の感覚で「弁償」を考えると規則違反になります。

在職中の一時帰国(home leave)はMOMの義務ではありません。有給か無給か、渡航費を誰が持つかは雇用契約で決めます。ここを法的義務と誤解している解説を見かけますが、MOMが定めているのは雇用終了時の帰国分だけです。

休日

週1回の休日が必要です。2023年1月からは、月に1回は金銭補償で代替できない休日を必ず与えなければならなくなりました。残りの休日を返上して働いてもらう場合は、月給とは別に最低1日分の賃金を払います。日給はMOMの計算方法で月給を26で割って出します。休日は半日を2回に分けることもでき、取れなかった分は1か月まで繰り越せます。

保険とセキュリティボンド

医療保険(入院・日帰り手術)と傷害保険を、それぞれ年間S$60,000以上の補償で契約する義務があります。医療保険の補償限度額は2023年7月にS$15,000からS$60,000へ引き上げられ、同時に請求額のうちS$15,000を超える部分は保険会社75%・雇用主25%の共同負担になりました。2025年7月以降に新規契約・更新するものには、免責事由の標準化と、保険会社から病院への直接支払いが適用されます。

セキュリティボンドはマレーシア国籍以外のMDW1人につきS$5,000です。現金で用意するものではなく、銀行または保険会社の保証で立てます。Work Permitが取り消され本人が帰国し、条件違反がなければ出国から約1週間で解除されます。給与の支払遅延や、期限後も帰国させないといった違反があると没収されえます。

手続きと健康診断

初めてMDWを雇う場合、雇用主はWork Permit申請の2営業日前までにEmployers' Orientation Programme(EOP)を受講します。オンラインで約2時間です。初めてシンガポールで働くMDWは、到着後7日以内にSettling-in Programme(SIP)を1日受講する必要があり、受けないとWork Permitが発給されず帰国になります。

就業後は6か月ごとの健康診断(6ME)が義務です。妊娠検査と梅毒検査が6か月ごと、HIVが2年ごと、結核は滞在2年の時点で1回。費用とそこから生じる医療費はすべて雇用主負担です。50歳以上のMDWは定期の6MEが免除され、Work Permit更新時のみ受診します。

妊娠が確認された場合、MOMは就労が認められなくなるため帰国することになるとしています。妊娠に関連する医療費は医療保険の対象外で、雇用主の負担になります。

やってはいけないこと

MDWが働けるのは、雇用主がMOMに届け出た住所での家事に限られます。知人宅の手伝いや店舗の仕事をさせると違法派遣にあたり、最高S$10,000の罰金と雇用禁止措置の対象になります。Work Permitなしで雇った場合はS$5,000からS$30,000の罰金、最長1年の禁錮、またはその両方です。

MOMは雇用主がパスポートを預かることを認めていません。パスポートは本人の私的書類であり本人が保管すべきものとされています。Work Permitカードも本人が常時携帯するもので、雇用主が保管してはならないとされています。

誰が雇えるか

雇用主は21歳以上で、未免責破産者でないことが条件です。MOMは経済的な扶養能力と、幼い子や高齢の家族がいるかといった必要性を審査します。最低収入の基準はあるとされていますが、MOMは具体的な金額を公表していません。EPまたはS Pass保持者も申請でき、その際は自身のパスが有効であることと所得証明の提出が必要です。

MDW本人の側は、申請時点で23歳以上50歳未満、認定証書を伴う8年以上の正規教育が要件です。採用できるのはバングラデシュ、カンボジア、香港、インド、インドネシア、マカオ、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、韓国、スリランカ、台湾、タイの13の国・地域の出身者に限られます。

雇用法の適用外である点

MDWはEmployment Act(雇用法)の適用対象外です。労働時間などが個別に規制されていないため、労働条件はWork Permitの条件と個別の雇用契約で決まります。契約の内容がそのまま実務になるので、休日や一時帰国の扱いは書面で詰めておく必要があります。

生活費全体のなかでの位置づけ

月S$950という下限は、生活費の総額で見ると夫婦のみ世帯の標準的な生活費の1割強にあたります。共働きで両方がフルタイムなら十分に見合う支出ですが、制度上は雇用主としての義務がついてくる点を織り込んで判断することになります。

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